オレが初回の投稿を済ませた数時間後、再び覗いてみるとオレの回答に対する感謝の言葉が並んでいた。
その瞬間オレは「良い人になろう」スイッチがONに入った。
自分が知っていることを答えてあげるだけでこんなに感謝されるなんて、こんな有難い話はない。
オレは「世のため、人のためになろう」スイッチもONにした。
相談の多くは闇金被害と借金問題とそれに関する法律の質問がかなりの数を占めた。
回答するのはもちろんオレ一人ではなく、多くの人が相談者の立場になり本当に親身になって答える姿を見てオレは寺の掲示板がすぐ好きになった。
回答者は自分のわかる範囲で答えるのだが、やはり難しい質問が来る時もある。
藁をも掴む思いで相談に来ている人にいい加減で出鱈目な答えはできない。
それをしたところで携帯掲示板なんて匿名であり、また出入り自由なために個人が特定されて恥をかくことを避けようと思えば避けられる。
しかし、オレは正確な解答をすることに全力を尽くした。

掲示板の回答者なんて全くのボランティアであり、答えなかったからと言って誰からも非難される訳ではないし、答えを間違ったからと言っても多少の非はあるが責任を取らされる訳でもない。
しかし、相談者のことを考えるといい加減な回答はできないと考えたのだ。
六法全書を傍らに置く専門家であればわかる問題でも、多少金融問題に詳しいとは言えオレは所詮素人である。
しかし、ただの素人では終わりたくない。
グレートな素人になりたい。
そのために、時間があれば図書館に通い中卒でもわかる法律関係の本を読み漁った。
そんなオレを見てヨメは「やはり変人だ」と言った。

難しくてわからない質問に関しては自分で調べ、記憶が暖昧な事柄に関しては最初に断りを入れておいて回答に精を尽くした。
中には答えたくないような質問もあるし、金融に関係のない相談まであるが、文字を通じたやりとりに喜びを感じていた。
オレがもう少しビジネスセンスのある奴だったら、これをビジネスとして自分の生計を立てていくことも可能だったのかも知れないが、幸か不幸かオレにはビジネスセンスのカケラもない。
「見返りは求めず誰かの役に立っている」、オレにとってはこの事実だけが重要だったのだ。
こんなことを書くと「お前は偽善者か」と言う人もいるかも知れないが、何とでも呼んでくれ。
どうせならグレートな偽善者になってやろうと思った。
お金に関する悩みは身近な人でもなかなか相談し難いものである。
法律事務所は敷居も高いし料金も高いが、携帯掲示板であれば匿名性を利用して普段は誰にも相談できない悩みをブチまけることができる上に悩みの解決までできるのである。
おまけにタダなのだ。
2005年の正月を迎えるにあたり、オレは悶々としていた。

却歳を過ぎて自分の道筋が見えないことに対する苛立ちに加え、散々悪さをしてきたことに対する後悔の念もあった。
「オレはこれから何をすべきなのか?」と考え抜いていたところに、正反対の考えがあることに気がついた。
今までの行動に後悔する部分があるのだったら、これから先は人に喜んでもらうために生きる人生だってである。
そう考えたオレは正月を迎えた日、家族に宣言した。
「これからは世のため人のために生きていくぜ 」と。
家族の反応は「性格なんて電気を点けたり消したりするみたいにすぐに変わるものか」って感じで冷ややかだった。
しかしオレは燃えていた。
そんな「世のためになることはないか」と探していた時に巡り合ったのが寺の掲示板であった。
毎日、仕事の合間の休憩時間や家に帰っても携帯ボタンをプチプチしていると、家族は「何か怪しいことをしているのではないか」と不審がった。
職場の人間にしても、休憩時間に難しい顔をして携帯画面に見入っているオレを見て「あいつは変だ」と思っていた人もいるだろうし、陰口を数く奴だっていたに違いないが、何と思われようと毘でもなかった。
自分の自由になる時間はすべてお悩み相談に費やしていたのだ。
そうして多額の借金を抱えて悩んでいる多くの人の相談を聞いていると、ある共通点があることに気が付いた。
世間一般の認識では多重債務に陥る人=金にだらしない人と思っているのではないだろうか。
もちろん、そんな人もいるがすべてではない。
多重に陥る人の3つの共通点とは、@周りに相談できる人がいない。
あるいは相談できる環境にない。
Aまじめな性格の人が多い。
B金融経済や世の中の仕組みに対する知識が乏しい。
以上の3つが共通点として挙げられるだろう。
一つ目の「相談できる人がいない」はそのままである。
多重に陥り苦しむ前に身近に相談できる人や機関があれば早期に解決できたであろうと予想される件はたくさんある。
が、現実には借金問題はなかなか親しい間柄でも相談し難いものだ。
また、専門家に相談するにしても、近くにいない場合もあるし、近くにいたとしても予約が必要で何日も待たされる場合もある。
折角予約をして相談会に出向いても、担当の弁護士が専門外であったり債務整理に理解のない弁護士であった場合には、相談どころではなく気分を害して帰ってしまう人もいる。
そんな人に対しては話を聞いてあげるだけでも相談者の心は安らぐもんだ。
匿名で気軽に相談できる場としての携帯掲示板はこんなメリットもある。
それに、誰にも相談できずにいると「世の中には借金問題で悩んでいるのは自分だけ」みたいな錯覚を起こしてしまう人もいるが、掲示板に集まる人は少なからず借金問題で悩んだ人が出入りしている。
それを見ると「悩んでいるのは自分一人ではない」って思えるのも掲示板の良いところである。
二つ目の「まじめな人が多い」と書くと「多重債務に陥るのがまじめなのか?」と思う人もいるかも知れないが、人生や社会に対してまじめに取り組んでいる人が多いのは事実である。
その一番の原因はやはり「借りた金は返さなくてはいけない」って道徳心だろう。
「そんなことは当然だ」って意見もあるのは十分承知しているが、借金を苦にして一家心中するのと、借金を合法的に踏み倒すのとでは大きな違いがある。
借金を踏み倒したところで生きてさえいればどんな形の社会貢献だってできるのだ。
もちろん、道徳心やル−ルを守るのは重要であるが、多重債務に陥り苦しんでいる場合には一つだけスイッチの切り替えをしてみよう。
「借りた金が返せなくても命があれば社会貢献ができる」と。
3つ目の金融経済、世の中の仕組みの知識が乏しいとは、これもそのままである。
最初に借金を作ってしまった理由は人それぞれであるが、金利の仕組みや臨む人間の手口等の知識があればいたずらに借入れを増やさなくても済んだ例はたくさんある。
別に法律家や経済の専門家を目指さなくても手に入る書籍やネット上で生活に必要な少しの知識を仕入れておけば、多重債務に陥らずに済んだかも知れないのだ。
今からでも遅くない。
本を読んで知識を身に付けよう。
一度身に付いた知識はきっと身を助けてくれるはずだ。
ついでに、文部科学省の関係者諸兄。
是非小学校からお金の仕組みを勉強させてくれ。
アリ脳とキリギリス脳少し前の日経新聞に掲載された記事であるが、人間の脳みその中には「アリ脳」の部分と「キリギリス脳」の部分があると言う。
中卒ではない脳科学者の話によると、これは人間誰もが持っているものらしい。

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